HOME > 相続税の節税対策(生前贈与)について

相続税の節税対策(生前贈与)について

できるだけ相続税を少なくするための準備です。いざ相続が起こってから税金を少なくしたいと思っても限界があります。残された家族が納税で苦しまないためにも事前の節税対策をおすすめします。その方法として生前贈与を上手に利用することが有効な手段となります。

相続財産を減らすには生前贈与がベスト

数ある相続税対策のなかでも、最も基本的で比較的容易に実行できる方法が、生前贈与を活用した節税方法です。生前贈与の考え方は、生きているうちにできるだけ多くの財産を相続人または相続人以外の人に移転し、相続時の財産を減らしておこうというものです。

生前贈与のおもな相続税対策一覧

対策 概要・特徴
連年贈与
(年間110万円)
贈与税の基礎控除(年間110万円)を利用して、相続人などに少しづつ財産を移転する
相続時精算課税制度を利用した贈与 贈与時に累積で2500万円まで課税されない。2500万円を超えても税率は20%と低い
子や孫に対する住宅取得等資金の贈与 住宅取得等資金贈与に限り1,000万円(省エネ・耐震性住宅は1,500万円)非課税 ※27年分。28年分は700万円(1,200万円)。消費税が10%になると変動あり。
配偶者に対する居住用資産の贈与 特例により婚姻期間20年以上の配偶者へ2000万円まで無税で贈与できる
孫への生前贈与 一代飛び越して贈与することで、相続が1回減る

(贈与税とは)

贈与とは、贈与者が受贈者に対し、双方の合意のもとに財産を無償で与えることをいいます。
贈与税は、贈与があったときに、財産をもらった人(受贈者)に課税される税金です。また、贈与税は、相続税を補完する税金として、相続税より高い税率が設けられています。

贈与税の計算方法(暦年課税)

1年間の贈与財産の合計額-基礎控除額(110万円)=基礎控除後の課税価格
基礎控除後の課税価格×速算表の税率-速算表の控除額=贈与税額

贈与税の速算表(平成27年1月1日以降)
※20歳以上の子・孫が受贈した場合

基礎控除額後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1000万円以下 30% 90万円
1500万円以下 40% 190万円
3000万円以下 45% 265万円
4500万円以下 50% 415万円
4500万円超 55% 640万円

【計算例】500万円の贈与を子が受けた場合
(500万円-110万円)×15%-10万円=48.5万円

連年贈与(年間110万円)で着実に財産を減らす

1度に多額の財産を贈与すると重い贈与税がかかります。そこで財産を小分けに、できるだけ多くの人に繰り返して行うのが生前贈与の王道です。下記のケーススタディのように繰り返して贈与する方法を連年贈与といいます。
贈与税には年間110万円の基礎控除がありますので、この範囲内での贈与なら、無税で財産を移転することができます。
贈与税を支払ってでもスピードアップで贈与した方が有利な場合もあります。贈与税は、基礎控除後の課税価格200万円までは10%の税率ですので、310万円までは最低税率で贈与することができます。

《ケーススタディ》

Yさん(60歳)には妻と2人の子どもがおり、2人の子どもにそれぞれ1人ずつ孫がいる
現在の財産 3億円
推定相続人 妻、長男、長女(法定相続分どおりに相続)

連続贈与で着実に財産を減らす

連年贈与の注意点

上記のケーススタディのように連年贈与は簡単な方法ですが、それだけに次の点に注意しないと最初の年に定期金を贈与する意図があったと判断され、多額の贈与税が課税されるおそれがあります。
(1) × 現金で渡している
→銀行振込を利用して証拠を残す
(2) × プレゼントのつもりで、受贈者に内緒で積み立てている
→受贈者に贈与の事実を伝える
(3) × 贈与者が銀行口座を開設し、通帳を保管している
→受贈者自身が口座を作り、通帳と印鑑を管理する
(4) × 毎年の同じ時期に一定額を振り込んでいる
→贈与の時期をずらし、金額にも変化をつける

なお、法定相続人に対する相続開始前3年以内の贈与は相続財産に取り込まれてしまうため、連年贈与はなるべく元気で早いうちに始めるのがポイントです。

生前の財産移転の切り札、相続時精算課税制度

(相続時精算課税制度とは)
親から子へ一度に多額の財産を贈与する場合、通常の暦年課税(年間110万円まで非課税)では税率が非常に高いため、生前の財産移転は非常に難しい。そこで、贈与税の負担を大幅に軽減し、財産の早期移転を促すために平成15年度より設けられたのが相続時精算課税制度です。
この制度はその名のとおり「相続時に税額を精算する制度」で、贈与税と相続税が一体になっています。つまり「生前贈与した財産もあとで相続財産に加えるので、遠慮せずどんどん贈与して有効活用してください」という趣旨の制度です。

(相続時精算課税制度の特徴)

(1)2500万円まで課税されない

最大の魅力は贈与時において2500万円までは課税されないことです。この課税されない枠は累積で2500万円になるまで複数年にわたって利用できます。また、2500万円を超える部分についても、一律20%という低い税率で贈与ができます。

(2)適用対象者の要件は

・贈与者 60歳以上の親・祖父母
・受贈者 20歳以上の子(養子を含む)・孫
※年齢は贈与を行った年の1月1日時点での判定

(3)対象財産・贈与回数は

贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません。

(4)父(祖父)・母(祖母)ごとに選択できる

父からの贈与については相続時精算課税制度を選択し、母からの贈与については暦年課税(110万円控除)を選択することもできます。
また、兄弟間(推定相続人ごと)で選択が異なっても問題ありません。

(5)この制度を選択するためには

この制度の選択をしようとする受贈者(子・孫)は、この制度を適用する最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に所轄の税務署に贈与税の申告を行います。その際に申告書にこの制度を適用する内容の届出書を添付します。

(6)選択の取消しはできない

この制度を一度選択すると、選択した親からの贈与は暦年課税(110万円控除)に変更することはできません。よって、選択する場合には慎重に判断する必要があります。

(7)贈与があった場合の申告は

この制度を選択した親からの贈与は、贈与税が課税されなくても贈与税の申告が必要です。期限内に申告が行われないと「暦年課税」が行われたと判断され多額の贈与税がかかる危険性があります。

(8)相続時の取扱いは

この制度は、贈与時には2500万円まで課税されませんが、生前にいくら贈与しても相続時には贈与時点の時価で相続財産に取り込まれます。よって、直接的な相続財産の減少になりません。

暦年課税と相続時精算課税の比較

暦年課税 相続時精算課税
贈与者・受贈者 だれでも 60歳以上の親・祖父母から20歳以上の子・孫への贈与
選択 不要 必要。選択届を提出する
控除額 毎年110万円の基礎控除 累積で2500万円までの特別控除
税率 10~55% 一律20%
申告 基礎控除額以内は不要 贈与のある年は必要
贈与財産の相続時の取扱い 贈与財産の課税関係はすでに完了。相続財産に加えない※ 贈与財産を相続財産に加えて相続税を計算。贈与税を納めた場合は、相続税額から控除する。相続税額を超える贈与税額があるときは還付

※ただし、相続開始前3年以内の贈与財産は相続財産に加算する

(相続時精算課税制度のメリット・デメリット)

<メリット>
(1)贈与時には2500万円まで課税されないので、一度にまとまった贈与ができる
(2)早期に財産を移転することで、子どもに資金が必要なときに援助することができる
(3)アパートなどの収益物件や、将来値上がりしそうな財産を贈与すれば相続税対策になる(贈与時点
の時価で評価)
(4)遺言によらず、被相続人(親・祖父母)の意思に則した財産の分配を生前に行える
(5)贈与税の納付額は、相続税の前払いとして、相続税から控除できる

<デメリット>
(1)一度選択すると相続時までの継続適用となり、年間110万円の基礎控除が使えなくなる
(2)生前贈与をしても直接的な相続財産の減少にはならない(相続時に相続財産に加算)
(3)選択した親からの贈与については、少額の贈与であってもすべて申告が必要になる

子や孫へ住宅取得等資金を贈与する

(住宅取得等資金の贈与とは)
平成27年1月1日から平成28年12月31日までの間に、父母や祖父母などから住宅取得等資金の贈与を受け、住宅を新築(または取得)したり、増改築等の対価にあてた場合は、一定額までは贈与税が非課税になるというもので、祖父母や親世代から子、孫世代へと一挙にまとまったお金を移すことができます。

非課税限度額

  平成27年 平成28年
※消費税が10%になると
変動あり
一般住宅 1000万円 700万円
省エネ・耐震性住宅 1,500万円 1200万円

住宅取得等資金の贈与が非課税となる要件

項目 要件
贈与者 ・受贈者の直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母など
・年齢制限なし
受贈者 ・贈与を受けたときに日本国内に住所を有していること。
または日本国籍を有し、過去5年以内に日本に住所を有したことがあること
・贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること
・贈与を受けたときに贈与者の直系卑属であること
・贈与を受けた年の合計所得金額が2000万円以下であること
贈与を受けた年の翌年3月15日までに自己の居住の用に供する一定の住宅を
取得または新築、増築し自己の居住の用に供すること(注)
対象となる住宅 ・家屋(区分所有の場合は区分所有する部分)の登記簿上の床面積が50㎡以上
240㎡以下
であること
・中古住宅の場合は、築20年以内耐火建築は築25年以内)であること。
ただし、一定の耐震性能を備えたものについてはこの限りではない
・居住の用に供する家屋が複数ある場合には、主として居住の用に供する1つの家
屋に限られる
・床面積の2分の1以上が居住の用に供されているものであること
適用期間 平成27年1月1日~平成28年12月31日までの贈与

(注意点)

原則翌年3月15日までに住宅の引き渡しを受け、居住するこの特例を利用するには、住宅資金贈与から住宅の購入、完成、引き渡し、居住までの流れをきちんと把握して期限に間に合うように計画的に進める必要があります。

<資金贈与から特例適用までの流れ>

平成27年中に父母、祖父母、曾祖父母から
↓ 1,000万円贈与
20歳以上の子・孫・ひ孫に

贈与を受けた住宅取得等資金1,000万円+自己資金+住宅ローン

①戸建住宅・分譲マンションを購入
②親族所有地に住宅を建築
③土地を先行取得して住宅を建築

原則 平成28年3月15日までに住宅の引き渡しを受け、居住の用に供する

平成28年3月15日までに贈与税の申告を行う

配偶者への居住用不動産(マイホーム)の贈与の特例

2110万円まで無税で贈与できる
この制度は、婚姻期間が20年以上の配偶者へ居住用不動産(マイホーム)、または居住用不動産を取得するための資金を贈与する場合には、最高2000万円を課税価格から控除できるというものです。基礎控除と合わせると、2110万円まで無税で贈与することができます。
この特例を利用した贈与は、相続開始前3年以内に行ったものでも相続財産に取り込まれることはないので、配偶者の財産減らしに役立ちます。

一般的には土地のみの贈与がトク
不動産取得のための金銭ではなく、不動産そのものを贈与する場合には、(1)土地のみ、(2)家屋のみ、(3)土地と家屋、の3通りの方法が考えられます。
家屋の評価額は年々下がっていくのに対し、土地は値上がりする可能性がありますので、一般的には①土地のみを贈与する方法が最も有利といえます。

節税効果はどれくらい?
この特例を利用した贈与が相続財産減らしに貢献することは間違いありませんが、じつは、相続税額は期待ほどには減らないことがあります。これは、相続税の計算の際には、自宅敷地は小規模宅地等の特例により、最高で80%引きの評価になるためです。よって、実際には贈与額の20%しか相続財産が減ってないのです。
もちろん、自宅以外に小規模宅地等の特例を適用することもありますし、遺産の総額などによっても節税効果は大きく違いますが、この特例は、相続税対策としては思ったほどの効果が得られない場合もあることと、また不動産の移転には登記の際の諸費用がかることなどを考慮する必要があります。

子どもを飛び越して孫に贈与する

相続税を1回免れる
子どもを飛び越して孫に贈与すると、今回の相続だけでなく、子の相続時の財産も同時に減らすことができます。また、その贈与財産については、相続税の課税を1回免れることになります。

3年ルールの対象から外れる
通常、生前贈与を子どもなどの法定相続人に対して行った場合、相続開始前3年以内の贈与については相続財産に加算しなければなりません。たとえば、前述の連年贈与を10年行ったところで被相続人が死亡すれば、おおむね7年分の贈与しか相続財産は減りません。
しかし、孫などの法定相続人でない人に対する贈与は、相続開始前3年以内のものでも相続財産に加算する必要がないので、せっかくの贈与が無駄になることはありません。

ページトップへ